昨年(2007年)11月22日(木)から25日(日)にかけて、「第8回アジア・太平洋NGO環境会議」(APNEC-8)がオーストラリアのシドニー大学で開催された。今回のAPNEC-8は、現地事務局サイドでの事情による準備不足もあって、参加国は、日本、韓国、マレーシア、ネパール、バングラデシュ、オーストラリアの6カ国にとどまり、参加者数も40名程度という、きわめて小規模な会議となった(なお、イギリスとアメリカからも各1名の参加者があった)。以下、このAPNEC-8の概要について簡単に報告しておく。 |
まず、このAPNEC-8の開催プログラムは、後掲のとおりである。日本からは総勢22名が参加し、うち5名から、次のような報告が行われた。①「アジア諸国における維持可能な社会を求めて--環境問題での日本の経験と教訓」(宮本憲一)、②「東アジアにおける持続可能な発展のための環境ガバナンス」(植田和弘)、③「東京大気汚染訴訟と『未認定』患者の救済」(尾崎寛直・除本理史)、④「日本における米軍再編の促進のための新たな政策をめぐって」(川瀬光義)、⑤「自然保護の手段に関する検証-神奈川県青根地区の事例から」(浅井美香)。 |
日本以外からは、①「気候変動--緊急行動の必要性」(Ian MCGREGOR)、②「気候変動とグローバルな発展--ポスト京都議定書の枠組みを求めて」(James GOODMAN)、③「グッドガバナンス、気候変動、人間安全保障、そして都市洪水-ダッカ市の事例から」(Aminur RAHMAN)、④「菜の花を活用したバイオディーゼルの研究」(CHOI Chung-Jik)、⑤「韓国における環境紛争と政策の概観-持続可能なガバナンスへの示唆」(KIM Jung Wk)、⑥「気候変動とジェンダー問題」(Ariel SALLEH)などの報告が行われ、全体として、気候変動問題に焦点を当てるものが多かった。 |
ちなみに、このAPNEC-8の3日目にあたる11月24日(土)はくしくもオーストラリアでの歴史的な総選挙の投票日と重なり、保守政権に代わって11年半ぶりに労働党政権が復活することになったが、その結果として、同党の公約であったオーストラリアの京都議定書への批准が決定した。ちょうど、この2日目に採択されたAPNEC-8の宣言(「シドニー宣言2007」)(後掲)は、この点を反映したものとなっている。さらに最終日の11月25日(日)には、今回の開催の現地事務局を担当してくれたStuart ROSEWARNE氏の案内で、シドニー・オリンピック・パークの現地視察が行われた。この視察は、当地で進められてきたストック型土壌汚染サイトの再生復元事業の経緯と現状について学ぶ貴重な機会となった。 |
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さて、以上のとおり、今回のAPNEC-8は小規模なものとなり、全体としてはやや盛り上がりに欠けたといわざる得ないが、会議終了後の各国代表による「Executive meeting of AEC」では、重要な議題が討議された。それは、1991年12月からスタートさせ、すでに16年にわたる取り組みを積み重ねてきたAPNECの組織的なあり方を今後どのようにしていくべきかをめぐる討議であった。この点では、マレーシアのLeong Yueh KWONG氏からの提案と日本環境会議事務局からの提案をもとにした真剣な議論が行われたが、今回は参加国が少なかったため、敢えて結論は出さず、次回のAPNEC-9まで引き続き検討を重ねることとなった。 |
なお、次回のAPNEC-9は日本環境会議が主催を引き受けるという提案が承認され、2009年11月下旬、尼崎市で予定している「日本環境会議30周年記念大会」と合わせて開催することがすでに決定している。 |
(寺西俊一) |
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