気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第四次評価報告書をはじめ、最新の科学的知見は、地球温暖化が現実に進行しており、温暖化の進行は、貴重な生態系を破壊し、私たちの生活にも深刻な影響を与えるものであると警告を発しています。こうした危機に世界が迅速に対応していかなければなりません。
アジアは、日本、中国、インドなどの大排出国を抱え、世界の温室効果ガス排出量の実に30%以上を排出する地域です。それゆえ、地球温暖化問題の解決はまさにアジアが今後どのような発展の途を選択するのかで決まるといっても過言ではありません。
他方で、アジア・太平洋地域は、地球温暖化の深刻な悪影響を被る最も脆弱な地域でもあります。IPCC の報告書は、アジアにおいて2050 年代までに10 億人以上が水不足の悪影響を受け、食糧不足のリスクが高くなると指摘しています。島嶼国は、温暖化に関連する激烈なハリケーンの到来や海面上昇により国の存亡に関わるような深刻な悪影響の脅威に直面しています。温暖化問題はまさにアジア・太平洋地域で生活する私たちの生存の問題でもあります。
危険な温暖化の悪影響を回避するには、今世紀中頃までに温室効果ガスの排出量を半減するような規模での削減が必要です。そのためには、ここ10 年のうちに世界全体の排出量を頭打ちにするような迅速で大規模な排出削減が必要であることを科学は示しています。これまで私たちが進めてきた温暖化防止の努力を基礎に、より抜本的な温暖化対策をすすめなければなりません。その点で、各国の温暖化対策を後押しする12 月のコペンハーゲン会議の成功はきわめて重要です。
野心的な温暖化対策を先導する国の役割と責務は肝要です。同時に、日々の温暖化防止行動の担い手であり、国や地方自治体の政策の決定者である私たち市民の力こそが温暖化対策推進の源泉です。日本や世界各地で地域レベルでの温暖化対策に関する貴重な経験が積み重ねられており、アジア・太平洋地域で広く共有されるべきものです。アジア・太平洋地域レベルでの地方自治体や市民の間の国境を越えた交流や協働は、アジア・太平洋諸国の温暖化対策を促進する力となるでしょう。
こうした趣旨から、コペンハーゲン会議を目前にし、このシンポジウムに参集した私たちは、京都議定書誕生の地京都から、訴えます。
- 日本政府、そして各国政府に対して、コペンハーゲン会議での国際的合意が、危険な気候変動を回避するために、積極的な温暖化対策を大きく後押しする合意となるようそのリーダーシップを示すことを求めます。
- 温暖化問題の根本的解決には、私たちの社会、経済を温室効果ガスの排出が少なく、地域の歴史性や文化をもとに環境保全をルールに組み込んだ持続可能な社会、経済に変革していくことが必要です。持続可能なアジアの実現にむけて、私たちは、
- これまで積み重ねてきた省エネや地域固有のポテンシャルを活かした再生可能エネルギー拡大の努力を進め、内発的で持続可能な発展を可能にする地域づくりを模索していきます。そして、こうした私たちの努力が適切に支援・促進される政策を国や地方自治体が策定・推進するよう求めます。
- アジア・太平洋地域レベルでの地方自治体や市民の間で、温暖化対策と悪影響に対処する適応策に関する経験や情報を交流し、アジア・太平洋地域の温暖化対策と適応策を促進するよう国境を越えた協働を進めていきます。
2009 年11 月21 日
第9 回アジア・太平洋NGO 環境会議
市民公開シンポジウム「持続可能な低炭素社会をアジアから」参加者一同
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