カトマンズ宣言 2005
 2005年11月4日から6日にかけてネパールのカトマンズで催された第7回アジア・太平洋NGO環境会議(APNEC-7)において、個々の環境専門家、環境NGOの代表としての力量をもった、9カ国・地域から集まった200名を超える参加者である私たちは、
・2002年の高雄宣言で掲げられた事項に対して取組み続けるという、私たちの立場とコミットメントを荘厳に再確認し、
・国際連合の賛助の下で批准された国際協定に規定されているような環境管理に関する基本的な原則に対する私たちのコミットメントを繰り返し述べ、
・紛争情勢と自然災害によってアジア・太平洋地域に引き起こされた環境上の懸念と課題に取組む必要性を理解し、
・人的要素と自然的要素との両方によって、特に紛争情勢と自然災害とによって引き起こされた環境上の懸念と課題とへの取組みにおいて、NGOによってなされた活動が重要ではあるが十分ではないことを認め、
・この地域の政府による公的なコミットメントと政策宣言とにもかかわらず、資源配分と環境法や環境政策の実行とにおいて重大な隔たりがあることに言及し、
・もし政府と非政府部門とが共に取組まなければ、これらの目的が達成されえないことを意識し、
・アジア・太平洋地域におけるそのような紛争情勢に対する根本的な理由の一つが、不平等な分配と自然資源に対する支配とであることを明確に理解し、
・そのような紛争と自然災害とが人間の生活と生態系の多様性とに与える環境上の負の影響を予防、是正、最小化する取組みに献身し、
・APNEC-7で集結した声と良心とが、この地域の政府を含む、環境における全ての利害関係者によって十分に聞き入れられ、重んじられ、考慮に入れられ、行動にうつされることを確信している。
 したがって、APNEC-7はこのカトマンズ宣言により、以下を宣言する。
1. 国際的組織、地域的組織、政府機関、非政府組織による多くの活動にもかかわらず、過去10年間、世界における環境の状態は改善していない。むしろ実際には、ますます環境劣化の兆候が示されており、この事実は深刻な懸念事項としてAPNEC-7で特に言及された。

2. アジア・太平洋地域の国・地域間で環境情報ネットワークを発展させなければならない。この目的に対し、政府レベルと非政府レベルの双方で、情報技術のさらなる利用を通じた情報共有、知識と経験の交換に関して、関係する国・地域は互いに協力しあわなければならない。

3. NGO、国連機関、国際機関、教育機関、政府機関との間の一層の協力を通じた、アジア・太平洋地域における環境に関する目標を促進する触媒となるよう行動するために、アジア環境会議は今まで以上に活動を強化し、制度化しなければならない。

4. NGOは、全市民社会レベルで、環境認知と市民参加との促進に果たすべき重要な役割をもっている。ドナー機関と関係政府当局とは、NGOと市民団体の活動を支援しなければならないし、法律、政策、資源の点でよりよい活動環境を彼らに提供するために最善を尽くさなければならない。

5. 様々な種類の生産活動に従事している事業会社は、自身の商業活動において、環境保護と公衆衛生とを追及する責任を負わなければならない。

6. アジア・太平洋地域にある多くの貧困国で、貧困は環境劣化の根本的な原因と結果の一つである。したがって、この地域の国々の環境管理戦略の不可欠な部分として、貧困緩和を統合する必要がある。

7. この地域の多くの教育機関と大学とが、環境科学と環境管理とにおいて様々なカリキュラムを提供してきた。これは非常に積極的な進展であり、この傾向は大いに高く評価される。環境教育に関しては、教育機関と大学との間の協力と相互作用とを強めなければならない。

8. アジア・太平洋地域は政治的な紛争によって最も影響を受けた地域の一つである。長く際限のない政治的な武力紛争は、社会文化環境と自然環境とに損失をもたらしている。その結果、人々の生活は悲惨で貧しいものになっている。特に子供と女性とに深刻な影響を与えている。政府部門と非政府部門との指導者が、自然環境と人類との全利益において、平和的解決を見つけるために共に取組む時である。正義と和解とを基礎にして、紛争を解決する政治的なコミットメントを示すことが、時代の要求である。

9. 環境の悪化は、ヒマラヤの山地の生態系と豊富な生物多様性とに脅威を与えている。ヒマラヤへのこの種の負の影響は阻止されなければならない。ヒマラヤは世界の全人類にとっての自然の贈物として保護されなければならない。このヒマラヤ地域は新鮮な水の貯蔵庫と水力エネルギーの潜在性とを提供する。将来、紛争にいたることのないように、これらの資源は協力を通じて開発されるべきである。

10. 環境管理に対する近代科学と近代技術との発展を悪く言うことはできない。にもかかわらず、この地域のさまざまな地方に存在する土着の共同体が、時の試練を経た、環境にやさしい、彼ら自身の自然資源管理と災害管理との技術を持っていることを無視することはできない。この土着のノウハウは研究され、促進され、この地域の全ての国・地域の総合的自然管理システムに統合されなければならない。

11. アジア・太平洋地域は、大洋災害と地震災害とによって過去2年にわたって最悪の事態を経験している。そのような自然災害の環境影響を緩和し、管理するために、徹底的な調査がなされなければならない。

12. 参加各国・地域のほとんどにおける裁判所制度は、司法積極主義を通じて人々に環境正義を与えるという非常に積極的な役割を果たしてきている。この裁判所制度の傾向は高く評価され、促進されなければならない。

13. 女性は環境的に脆弱な地区における自然資源の不可欠な管理者であるが、同時に、アジア・太平洋地域における環境劣化によって最も影響を受けている。環境管理における女性のエンパワーメントと参加とは、有効な環境管理と自然資源管理とにとって重要である。政策とプログラムとは、ジェンダーに敏感かつ焦点をあわせたものでなければならない。

14. 紛争によって影響を受けている国・地域の環境NGOと市民団体とは、武力紛争によって引き起こされた被害を公表し、計画的な対応を要求するための「環境・生物多様性破壊指標」を国内組織、国際組織、各政府に発表させなければならない。
以上について、2005年11月6日にAPNEC-7の参加者はこの宣言を満場一致で承認した。
 私たち、APNEC-7の参加者一同は、この会議を主催した環境における女性(Women in Environment)、リーダーズ・ネパール(LEADERS Nepal)、カトマンズ大学(Kathmandu University)、アジア環境会議(the Asia-Pacific Environmental Council)、日本環境会議(Japan Environmental Council)、セイム・インターナショナル日本(SAME International Japan)による暖かいもてなしに対して、ここに感謝の意を表明したい。
 
JEC 日本環境会議