2002年11月に台湾の高雄で開催された第6回アジア・太平洋NGO環境会議(APNEC-6)から3年を経て、2005年11月4日(金)~6日(日)、第7回アジア・太平洋NGO環境会議(APNEC-7)がネパールのカトマンズで開催された。 |
当初は2004年の開催を予定していたが、ネパールの政情不安により2度にわたり延期され、ようやく開催にこぎ着けた。ネパールでは、2001年6月の皇太子による国王らの射殺事件以降、新国王と主要政党、武装勢力「ネパール共産党毛沢東主義派(毛派)」の三者間の対立が続いている。2005年2月には、国王が非常事態を宣言して全閣僚を解任、直接統治を始めた。主要政党の指導者を自宅軟禁したり、大規模な集会を禁止、活動家やデモ参加者を拘束したりするなど、諸外国から人権抑圧を非難される状況にあった。 |
こうした状況をふまえ、日本環境会議からは必要最低限に人数を絞って参加した。しかし、9月に毛派が一方的停戦に入っていたこともあり、会議開催中のカトマンズ市内では、主要な建物に機関銃を持った兵士が警備に当たっていた他は、特に不穏な雰囲気を感じることはなかった。日本の対応とは対照的に、韓国からは30名近い参加者が訪れ、会議後のエクスカーションとして、アンナプルナをはじめとしたヒマラヤの景観が美しいポカラまで足を伸ばしていた。なお、会議後は再び情勢が悪化し、2006年1月には毛派が停戦を破棄、2月に国王が実施した地方選挙を政党側がボイコットするなど、混乱が続いている。 |
APNEC-7は、環境における女性(WE: Women in Environment)、リーダーズ・ネパール(LEADERS Nepal: Society for Legal and Environmental Analysis and Development Research)、カトマンズ大学(Kathmandu University)、アジア環境会議(AEC: the Asia-Pacific Environmental Council)、日本環境会議、セイム・インターナショナル日本(SAME International Japan)による共催という形で実施された。開催国ネパールの他、インド、バングラデシュ、日本、韓国、マレーシア、シンガポール、オーストラリアという、9カ国からのべ200名を超える参加を得た。参加者の顔ぶれも、環境NGO関係者、環境問題・環境政策に関わる研究者、弁護士などの法律家、国際機関関係者、行政関係者、ジャーナリスト、大学院生・学生、一般市民など、多様なものだった。 |
11月3日にはレセプションが行われ、長旅の疲れがネパールの料理と音楽によって癒された。4日は、開会式に続き、全体会において国別の環境報告やパネルディスカッションが行われた。5日はテーマ別のグループ・セッションが行われた。具体的なテーマとしては、保全と維持可能な開発、武力紛争と環境、汚染制御と清浄な環境、自然災害と地域協力、政策・制度とパートナーシップが取り上げられた。武力紛争や自然災害は、開催地ネパールの直面している問題を強く反映したものだったといえる。どのセッションも積極的な討論が行われた。6日は、カトマンズ近郊デュリケルのカトマンズ大学に場所を移し、ヒマラヤの展望を背景に閉会式が行われた(写真)。後掲の「カトマンズ宣言」を採択し、次回APNEC-8のホスト国に韓国を選出して成功裏に閉幕した。なお、その後、オーストラリアからAPNEC-8承知の申し出があり、AEC事務局による協議の結果、次回はオーストラリアで開催する方向で調整を進めている。 |
(山下英俊) |