アジアは、中国、インドなど人口大国を抱え、世界の半数以上の人々が暮らしている。また、アジアは、経済成長が著しく、世界の生産基地と化している。こうした経済発展の裏側で、地域的にみると、非常に深刻な環境問題が起こり、地域住民に被害を及ぼしている。同時に、気候変動問題に典型的にみられるような地球規模の環境問題の原因にも、アジアの寄与は大きい。アジアが持続可能な発展を遂げることは、人類全体にとって極めて重要な課題となっている。
こうした問題意識をもつ環境問題の専門家・NGOが中心となって、第1回アジア・太平洋NGO環境会議(Asia-Pacific NGO Environmental Conference: APNEC)が1991年にタイのバンコックで開かれて以来、2,3年に一度のペースで、各国でAPNECが開かれ、連帯と相互協力のためのネットワークが形成されてきた。
こうしたこれまでの経験を引き継ぎ、第9回アジア・太平洋NGO環境会議(APNEC9京都会議)は、日本環境会議(JEC)・京都府・京都市の共催で、2009年11月20、21日に京都市において開催された。日本で開催されるのは、1994年に第3回会議が京都で開催されて以来、15年ぶりのことである。
今回の全体テーマは「持続可能なアジアへ――京都からの発信」で、アジア各国の経験や教訓を共有し、国家的利害や企業の利害を超えて、地球環境保全にむけた道筋を具体化し、京都から発信していくことにあった。第1回会議以降、アジアの環境問題は複雑化してきていることから、今回は改めて重要となっている個別の論点について専門的な討議を行うこと、また、AEC(Asia Environmental Council)とAPNECの体制強化に向けた課題を話し合うことが目的とされた。加えて、気候変動枠組条約第15回締約国会議(コペンハーゲン会議)の直前であったことから、この会議に向けて市民から発信を行うことも目的とされた。
会議期間中は、オープニング・セッション、実行委員会が企画したテーマ別の4つのセッション(第1~第3セッションA、第4セッション)と3つの自由論題・国別報告セッション(第1~第3セッションB)、全体セッション、市民公開シンポジウムにおいて活発な討論が行われた。報告は、日本、中国、韓国、台湾、マレーシア、タイ、シンガポール、インドネシア、ネパール、フィリピン、オーストラリア、アメリカ、ドイツ、ミクロネシア連邦の14の国と地域からの研究者・専門家・市民活動家によって行われた。参加者は延べ約200人であった。
(大島堅一)
Kyoto Climate Change Appeal for Combating Climate Change
(*『環境と公害』第39巻第4号、2010年4月、掲載)