2013年4月5日(金)14:00-17:30 株式会社農林中金総合研究所会議室にて |
第13回の全体会合は、原発事故の被害のとらえ方と被害補償のあり方をテーマに開催されました。まず、大森正之氏(明治大学教授)が経済学の立場から、山下祐介氏(首都大学東京准教授)が地域社会学の立場から報告しました。それを受けて中島肇氏(弁護士)、淡路剛久氏(JEC理事長・立教大学名誉教授)からのコメントがあった後、全体で質疑応答・総合討論が行われました。
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(文:吉村武洋 写真:藤谷岳) |
報告1:大森正之氏(明治大学教授)
「福島原発事故の被害をどうとらえるか:社会的費用論・物質代謝論・コモンズ論からのアプローチと諸課題について(川内村・三春町・飯舘村調査を踏まえて)-経済学の立場から」
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大森氏からは、まず、社会的費用論の観点から福島原発事故の原因について提示されました。そして、オンサイト・オフサイトの減災措置の拡充、財政転嫁の抑止、エネルギー・電気事業政策の転換が、対策として必要であると指摘されました。次に、物質代謝(撹乱)論の観点から進められている、被害実態調査の途中経過について報告されました。さらに、川内村・三春町・飯舘村でのヒアリング調査結果から、コモンズの分解・解体の状況が示されました。最後に、コモンズ再生・コモンズ新生のスキームが提示されました。 |
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コモンズの再生・新生について報告する大森氏 |
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報告2:山下祐介氏(首都大学東京)
「福島原発事故の被害をどうとらえるか――地域社会学の立場から」
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山下氏からは、福島原発事故が提起した問題について、特に自治の問題をどのように考えるかという観点から報告がありました。報告の中では、警戒区域設定から解除に至る過程で、国から自治体へ、あるいは自治体から住民への責任の転嫁がなされているのではないかと指摘されました。そして、現在も十分な情報もなく、住民自治や住民参加が軽視されたままで事態が進んでいることを問題視されたうえで、安全で持続可能な国家・地域社会の運営が、きちんとした自治・住民参加の下で行われるような仕組みを、今度こそ作り上げることが必要であると指摘されました。 |
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警戒区域設定から解除に至る過程を報告する山下氏 |
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コメント:中島肇氏(弁護士)・淡路剛久氏(JEC理事長・立教大学名誉教授)
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中島氏は、避難指示等の根拠とされている国際放射線防護委員会(ICRP)の議論がどのようなものであるか踏まえたうえで、今後の損害賠償の範囲について、どのように考えていけばよいか問題提起されました。淡路氏は、被害の実態に基づいた損害賠償の必要性を再確認したうえで、これまでの損害賠償論の展開について解説されました。そして、今回の福島原発事故が提起した問題の特徴と損害賠償のあり方について、問題提起されました。 |
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中島氏 |
淡路氏 |
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質疑応答・総合討論 |
報告・コメントを受け、様々な論点について議論されました。現場からは、「前の町に戻してほしい」という切実な思いが表明されるなど、原状回復の重要性が改めて確認されました。さらに、コミュニティや人間関係をはじめとする金銭賠償ができないような被害の救済や、個人に帰されないような環境全体の損害賠償など、どのように考えていけばよいか議論されました。
最後に、これまでの議論を踏まえたシンポジウムの開催について、スケジュール案が提示され、第13回の全体会合は閉会となりました。
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