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第10回アジア・太平洋NGO環境会議(APNEC-10)の報告 |
(文責:藤谷岳) |
2011年11月20日から22日にかけて,「第10回アジア・太平洋NGO環境会議」(APNEC-10)が台湾・台北市の公務人力發展中心(Civil
Service Development Institute)で開催された(20日と21日は会議,22日は現地視察).台湾でAPNECの会議が開かれるのは,2002年11月のAPNEC-6(於・高雄)以来,9年振り2度目であった.
2011年,APNECは発足から20年目の節目を迎えた.さらに,同年は中華民国(台湾)の建国100周年でもあった.このような記念すべき年に開かれた今回の会議は,アジア・太平洋地域を中心とする23の国と地域から,総勢600名を超える参加者を集め,盛大でかつ内容的にも充実したものとなった.
第1日(11月20日)は,加藤久和氏(名古屋大学名誉教授・帝京大学教授・日本環境会議理事)による基調講演で幕を開けた.加藤氏は,2011年3月に発生した東日本大震災および福島第一原発の事故をふまえ,気候変動対策,土地利用計画とその管理,生物多様性の保全に向けたアジア・太平洋地域における連携・協力が今まさに緊急課題となっていると語った.
その後,5つの会場に分かれての分科会に移った.分科会のテーマが非常に幅広いものであったことは,今回の会議の特徴の一つと言ってよいだろう.廃棄物管理,環境訴訟,気候変動と農業政策,漁業資源および海洋生態系の保全,水資源管理,環境保全とトラスト運動,アスベスト問題,災害とエネルギー政策,環境教育,ユースセッションなど,約20のテーマについて,2日間で30のセッションが開かれた.報告者は約90名であり,日本からは,地元・台湾に続いて二番目に多い19の報告があった.また,日本も含め,若手の参加者からの報告が数多くみられたことも注目すべき点である.
第2日(11月21日)は,John Seed氏(Rainforest Information Center,オーストラリア)による基調講演で始まった.Seed氏は,写真を用いながら,我々人間はどのようにして生態学的なアイデンティティを高めていくべきか,そして,地球とどのようにつきあっていくべきか,というテーマで,迫力ある講演を行った.
引き続き,分科会が行われたあと,2日間の会議の成果をとりまとめた「台北宣言」が参加者によって採択され,会議は成功裏に幕を閉じた.
第3日(11月22日)は,参加者の希望によって複数のグループにわかれて,現地視察をおこなった.筆者は,台湾で最初のナショナル・トラスト運動地である新竹華龍村の自然谷の視察に同行した.現地では,子どもたちを含む地域の方々から,地元の農産物をふんだんに使った料理を用意していただくなど,熱い歓迎を受けた.農村の地域コミュニティとそれを支える自然や文化を維持していくことの大切さを再認識し,非常に充実した内容の現地視察であった.
今回の会議は,数多くの興味深い報告があったことに加えて,参加者同士の議論が非常に活発な会議であったという印象を受けた.APNEC発足20周年記念となるこの会議の成功は,現地事務局を担った荒野保護協會(The
Society of Wilderness)のスタッフの尽力によるところが大きい.事前準備,会議中の参加者サポート,さらには事後にも丁寧なメールをいただくなど,非常にきめ細かい対応をしていただいた.報告者・参加者の一人として,心から感謝の意を示したいと思う.
なお,次回APNEC-11は韓国で開催される予定である.
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