2011年5月20日(金)17:00-19:00
東日本大震災と福島第一原発の事故を受けて、政府は「震災復興構想会議」を発足させ、第1次補正予算を成立させるなどの対応を始めています。依然として極めて深刻な状況が続くなか、JECは、これまでに築いてきた学際的なネットワークと研究の蓄積をいかし、あくまで被災者の立場に立った復興・再生につながるような独自の取り組みを検討・提言すべく、「東日本多重災害復興再生政策検討委員会」を立ち上げました。
発足会合となった第1回では、塩崎賢明氏(JEC理事・神戸大教授)が、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた復興・再生の課題について講演しました。その後、本委員会の体制や方向性についての討論が行われました。
(文責・写真:藤谷岳)
塩崎氏は、まず、今回の震災が阪神・淡路大震災と異なる特徴として、「超広域であること」、「災害に複合性があること」、「被災地が非常に高齢化の進んだ地方の小都市や集落であること」の3点を挙げました。
一方、阪神・淡路大震災の際には、「孤独死」、「新長田の再開発問題」、「震災障害者」、「アスベスト被害」、「借り上げ公営住宅問題」という5つの「復興災害」と言うべき問題が引き起こされ、これが現在も続いているとし、今回の震災の復興過程でそのようなことを繰り返してはならないことを強調しました。
今後の復興における課題としては、「大量・広域・長期にわたる県外避難をどのようにマネージメントするのか」、「応急仮設住宅をどのような形で建設していくのか」、「集落集団移転の問題も含めてまちづくり・むらづくりをどのように進めていくのか」という3点について、これまでの震災復興の例を絡めながら説明し、日本において災害復興制度がないことが最大の問題であると指摘されました。
その後、塩崎氏の講演を踏まえながら、今後のJECとしての復興再生政策検討の方向性、体制・運営面についての討論が行われました。
討論では、JECとして中長期的に腰を据えて取り組まなければならない課題と、できるだけ速やかに意見書をまとめて政府に申し入れを行わないといけない課題とがあることが指摘されました。
腰を据えて取り組むべき課題については、原発問題とエネルギー政策の再検討、および、農業・漁業に立脚した地域経済の復興再生支援策の検討という2つのワーキング・グループを立ち上げて取り組む方針が打ち出されました。
急を要する課題については、JECが政府の復興構想会議に提出する第1次緊急意見書の文案についての報告と承認が行われ、これをすみやかに完成させて提出することが決定しました。