第30回東日本多重災害復興再生政策検討委員会全体会合

2016年9月9日(金)16:00~19:00
東京大学 本郷キャンパス 工学部14号館1階141号室にて

 第30回の全体会合は、東京大学復興デザイン研究体との共催でおこなわれた。JEC検討委員会関係者を含めて約50名が出席された。「福島原発事故6年目:地域再生に向けた研究の新たな協働をめざして」をテーマに、窪田亜矢氏(東京大学特任教授)と除本理史氏(大阪市立大学教授)から報告が行われ、フロアとの間で質疑応答・意見交換がなされた。それらを踏まえ、寺西委員長よりJEC検討委員会のこれまでの活動と今後の取り組み方針について説明が行なわれた。

(文責・写真:藤原遥)

報告:窪田亜矢氏(東京大学特任教授)
「原発被災からの協働の復興に向けてー南相馬市小高復興デザインセンターの取り組み」


原発被災からの協働の復興に関して
報告される窪田氏

 窪田氏からは、南相馬市小高復興デザインセンターの取り組みを例に、原発被災からの協働の復興に関する報告がなされた。はじめに「小高復興デザインセンター」の発足の経緯と活動内容についてご紹介いただいた。同センターは2015年7月に発足した。東京大学が南相馬市から委託を受けて、小高区の復興に取り組むための拠点施設として運営している。地域住民と研究者、学生が協力して実践と探究を繰り返し、小高の復興のあり方と将来像を「小高地域構想」としてまとめることを目的としている。同センターの経験を踏まえて、地域構想を検討するに際して生じる課題と問題解決の方向性を示された。最後に、原発被災の復興に学術的に関わる意義を述べられた。

除本理史氏(大阪市立大学教授)
「原発事故被災地における賠償と地域再生の課題ー川内村の事例から」


原発事故被災地域における賠償と地域再生の課題
について報告される除本氏

 除本氏からは、川内村を事例に、原発事故被災地域における賠償と地域再生の課題について報告された。避難指示解除が進行される一方、住民の早期帰還が困難である現状を述べられた。また、担い手の避難継続により伝統芸能の継承に影響が及び、避難指示解除された地域において「ふるさとの変質、変容」被害が生じていることを説明された。原発事故被災地域の復興における問題点として、不均等な復興がもたらされていること、賠償格差や復興政策によって被害者が分断されていることを指摘された。最後に現行の賠償制度と復興政策の問題点を克服するための改善策を示された。

今後の取り組み方針について


 

 寺西委員長より、JEC検討委員会のこれまでの活動と今後の取り組みについて説明がおこなわれた。今後の取り組み方針として、全体会合を開催し「震災復興再生政策研究」を継続すること、3つの検討部会による調査研究を推進していくこと、より具体的な政策提言を発信する取り組みを重視すること、他の研究グループと連携・協力を進めることが示された。最後に、今後のスケジュールについての確認が行なわれ、第30回の全体会合は閉会となった。